第20章 banana pancakes
・
・
・
「研磨クン、穂波ちゃんの悩みは解決しましたか〜?」
練習の後、部室に行く道すがら
クロが楽しそうに言ってくる
「………うん、まぁ、そうだね」
「あらやだ。昨日の今日で何があったのかしら」
「クロ、その喋り方ウザ……」
「………」
「………」
「太腿に愛の印が見えてますけど」
「…あぁ……」
ウェアの丈が短いから、昨日穂波がつけた痕がみえる
愛の印って… 何言ってんのクロ
「何してもらうとそこに穂波ちゃんの顔がくるのかねぇ〜」
「…ちょっとクロ、ほんとにウザいんだけど」
「はい、すいません。…研磨が健全すぎるほどに男だってことに改めて喜んでんの」
「……はぁ。 …別におれはふつうだって言ってるじゃん。普通だよ。
健全とかそういうんじゃなくて普通。 別に喜ぶとこでもないし。 …穂波以外には興味ないけど」
「うん、まぁ、それはわかるけども」
「…でも、する前からもうタヒチ行こうかなって言ってた」
「お。何する前?」
「…それについて話してるんじゃない」
「………」
「まぁ、結局行くのは分かってたけど、ちょっと驚いたかな。
行かない理由におれが入ってくるなんて」
「………」
「大学とか、そんな風に悩まないと良いんだけど」
「………」
「ま、いいや」
「…大学って。 …ほんと不安とかそういうのないんだな、研磨」
「…心配はなくはないけど、気にしても仕方ないし。不安はないかな」
「………」
「あ、でもちょっと脅威的な存在に気づいたかも」
「…お?赤葦?」
「…赤葦? あ、やっぱ赤葦もそうなんだね。 …いや、赤葦じゃないんだけど」
「カズくん?」
「いや、カズマはまだ今のとこ」
「………」
「…いや、やっぱ言わないでおく」
「おい! 生殺し! すげー気になる!」
部室の前で立ち止まって話してたけど
部室のドアを開けて入る
後ろでクロがぎゃーぎゃー言ってる。
海に脅威を抱いてる
なんて言葉にして言ってしまうのはなんというか。
クロは穂波のこと知ってるし
馬鹿にはしないだろうけど、別に言うことでもない。
ていうか、そんな気にするとこじゃない