第20章 banana pancakes
ー研磨sideー
目を覚ますと、
穂波が窓の方を向いてストレッチしてた。
…やわらか
他の人がやってるの見てもなんとも思わないけど
穂波がやってると途端に色っぽい。
穂波にとっての当たり前のストレッチ。
「穂波、おはよう」
声をかけると、
伸ばしてた身体を元に戻して顔をこっちに向ける
『おはよう、研磨くん。よく眠れた?』
おれの中に飛び込んでくる、この笑った顔。
何度見ても、はっとする。
花が開いたみたいな、
いつも新しくて、
それでいていつもほっとする笑顔。
「うん、眠れた」
穂波はストレッチを中断して
四つ足でとことことこっちに向かってきて
ベッドに肘をかけ、にかっと笑う。
『いい夢見れた?』
「…夢。 あぁ、うん。 見た気がする」
『わ。それは良かった』
本当にそれは良かったって思ってんだろうな、
おれがいい夢見た気がすることただそれだけを。
…どんな夢かとか聞いてこないんだ。
身体をすこし起こして穂波に口付ける。
髪を耳にかけながら話しかける
「穂波は?いい夢見れた?」
『わたし?わたしはね、ぜんっぜん覚えてない 笑』
「…ふ 笑」
…なんとなくそんな気がした。
穂波が見た夢の話、聞いたことない。
『シャワー浴びるよね。 一緒に下降りよう?』
あー、このままベッドに引き摺り込んでしまいたいけど。
「…ん。 降りよっか。 喉かわいた」
この、今のおれたちの日常っぽい感じも、
全然嫌いじゃない。