第20章 banana pancakes
ー穂波sideー
「穂波、ココア飲みたい。冷たいやつ」
たまにこうやって、子供みたいなおねだりをしてくる。
何度でもきゅんとする。
研磨くんの緩急の付け方はずるい。
何度でも思う。
ずるい。
冷たいココアを作って、さきに上にあがった研磨くんのとこへ行く。
マンゴージュースが冷蔵庫にあったのでわたしはそれを。
…お母さん、だいぶタイの気分だったんだな。
『研磨くん、お待たせ』
相変わらず。ゲームして待ってる。
生え際がだいぶ黒くなってきた。
明日、プリン作ろっと。
「わ、生クリーム乗ってる」
『ごめん、聞かずに乗せた。いらなかったら食べる。笑』
「いや、このままでいい」
『…ん、よかった。 …7話からだよね。 久々だね』
「…だね」
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『株式トレーダーってあんな風に会社勤めのパターンもあるんだね。知らなかった』
続けて2つみたけど、
そのうち1つはインサイダー取引に関する話だった。
「…ん?」
『カズくんのお父さん、株式トレーダーもやってて、
話を聞いてもいまいちわたしによくわかんないんだけど…
カズくんのお父さんは基本家で仕事してるイメージだったから、
勤めの株式トレーダーもいるんだ、って …普通なこと?』
「…まぁ、そうだね。
投資銀行とか証券会社にトレーディング部門ってのがあるんじゃないの。
おれもよくわかんないけど」
『…へぇ』
「カズマのお父さんトレーダーなんだね」
『トレーダーもっていうのかな。フリーランスで映像とかデザインとかしてる』
「…へぇ …ふーん」
ちょっと、研磨くんが食いついたような…
気のせいなような…
なんとなく、
前にカズくんのお父さんがうちに来たときに思ったんだけど
研磨くんはきっと、少しカズくんのお父さんに興味がある。
カズくんは10歳。
カズくんのお父さんは30歳。
若い、お父さんだ。
わたしのお父さんより、お兄ちゃんの方が歳が近い。
お洒落で、気さくで、聡明で、落ち着いていて、でもやんちゃで…
かっこいいお父さんだと思う。
だからって研磨くんが興味を持つわけじゃないんだろうけど…