第19章 みかん
ー穂波sideー
「おーい、終わったかぁ? …お、赤葦クンもいるじゃないの」
みんなで集合して、締めて解散するから外に行くようにクロさんが言いにきてくれた。
『はーい、今行きます! 京治くん手伝ってくれてありがとう』
「…うん。俺も、ありがとう」
『 ? 』
手伝ってくれたのにお礼をいわれてしまった。
廊下を歩きながら話す。
「楽しい時間を、ありがとう」
『あぁ、うん。わたしも楽しかった。京治くんとの時間は楽しい。
…なんだろうな、なんだろうね。 …よくわかんないけど』
なんなんだろうな、ほんとにこの感じ。
深ーいところにあるものが覗けそうになる感じというか。
探究心をくすぐられるものがある。
でもどきどきする冒険のような感じではなくって、
例えば顕微鏡を覗くようなそういうわくわく。
あくまでも穏やかで、落ち着いていて、ふつふつと湧いてくるような感じ。
「じゃあ、また森然で」
『うん、またね。また本の話もしようね』
お分かれの挨拶をして、音駒部員の元へと向かう。
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電車の中で、研磨くんはぐっすりと眠ってる。
クロさんもうとうとしてる。
こんなに一度にたくさんの人に始めましてをしたのは久しぶりだな。
いや、あの人数は初めてかも。
役に立てたかはわからないけれど、任されていたことはできたと思う。
うん。
「…なぁ、穂波ちゃん」
『…ん?クロさん起きてたんだね』
「おー、なんとか」
『…どうした?クロさん』
「連絡先とか誰とも交換してねぇ?」
『…ん?仁花ちゃんと交換したよ』
「………あ、そ。なら良いんだけど」
『…?』
「研磨には自分から聞いてたよな、穂波ちゃん。電車の中で」
『…あぁ、うん。研磨くんのこと知りたかったから。もっとそばにいたかったから』
「…………」
『…ん?』
「ぱっと見わかりずれーけど、でも、結構シビアに線引きしてんだなぁと思って」
『…?』
「研磨が、穂波ちゃんのことある程度放っておけるわけがちょっと今回わかったわ」