第5章 夏
片付けながら穂波はお湯を沸かしてお茶を淹れていた。
一つ一つの動きが慣れていて、いつもやってるんだな、と思う。
『研磨くん、片付けありがとう。早く終わった。お茶飲もう?』
「…ん」
穂波はお茶と一緒にイチジクとぶどうを出してくれた。
なにこれ、おじいさんになったみたい。
そのまま少し喋ったりして過ごす。
『研磨くん、まだ時間ある?部屋ですこしゆっくりできるかな?』
20:20。
「うん、まだ大丈夫」
二階にある穂波の部屋に来た。
ローベッドのシーツとか壁とかが白くって、
家具は木でできていて、ものは多くない。
すごく穂波らしい部屋。
『研磨くん、これお土産』
「…わ。いいの?ありがとう…開けてもいい?」
味のある赤茶色のTシャツ。
これも胸元にロゴが刺繍されてる。
かっこいい。
「…いいね、着心地もよさそう。ありがと」
『いろいろ迷っちゃって。使えるものにしようと思って…』
「サイズもちょうどよさそう。かっこいいね。これって、普通の色?」
『pigment dyeing...なんて言うんだろ。土からpigmentを採って、それを使って染めてるって。
あのね、ちょっとお洗濯が手間なの。最初の方は単品洗いしなきゃで…
迷ったんだけど…わたしもお揃いで買おうと思って…違う色のワンピース、買っちゃった。
もし手間だったら、わたしが洗濯するからね 笑』
「…いや、大丈夫。できる…あ、でももしできなかったらお願い」
『うん。遠慮なくいってネ。…あとこれ、お兄ちゃんから』
「…え、なんで」
『ふふ、研磨くんに会いに冬に帰れるようにするって言ってた』
「…わ、これ穂波がもってるやつ」
穂波がいつも使ってる水筒の黒いやつだった。
穂波は白。
『これ、ハワイ初のウォーターボトルなんだけど、研磨くんに贈りたくって。
Tシャツと迷ってたらお兄ちゃんがこっちは俺からって。
お兄ちゃんも使ってるの。ちなみにお兄ちゃんはカーキだよ』
「…うれしい。これいいなって、穂波の見て思ってた。
光ってなくて、マットな感じがかっこいい。使ってみる…」