第5章 夏
「…シャワーありがと」
シャワーを浴びて、穂波のいるとこに行った。
『あ!やっぱ似合う。研磨くん、かっこいい』
穂波が用意してくれたのは
墨色のトップスで胸元に同色の色の糸でロゴが入っているものと、
グラミチの焦げ茶のショートパンツだった。
「…これ、グラミチのは?」
『あ、それお兄ちゃんが履いてたの。
生地もしっかりしてるしかっこいい色だな〜って思って。大丈夫そう?』
「…うん。ありがと。お兄さんはもうハワイ出たの?」
『うん、一緒の日に発ったよ。研磨くんと仲良くねって言ってた』
「…ん」
『もう少しでできるから、ラクにしててね。
あ、ゲームってネット使うの?パス教えとくネ…』
ゲームはせずソファに座って
天井で回ってるファンを
上を向いてぼーっと眺めてた。
『研磨くん、お待たせ〜』
「ん…」
ダイニングテーブルにいくと、すごい美味しそうな料理が並んでる。
「すご、これ穂波が全部作ったの?」
『うん。なんかね、よくお客さんが来る家だから、料理する機会も多くて。
エヘン、作ることはできるのだ!笑』
鯵の南蛮漬け、豆腐のサラダ、人参のマリネ、小松菜と油揚げの煮物、
豚汁、土鍋で炊いたごはん。
何これ、こんなの作ってもらえるなんて思いもしない。
おれら高校生だよ?
サラダのごまドレッシングも美味しいと言ったら
いろいろ混ぜればできるんだよ〜と呑気なことを言ってた。
「穂波、ほんとに美味しかった。ごちそうさま」
『…ふふ。よかった。足りた?もっとタンパク質くれー!とかあったら、なんかする』
「いや、十分。ほんと、ちょっと、驚いてる」
『…? ん、なんでも遠慮なく言ってね』
そんなことを喋りながら、机の上をなれた手つきで片付けていく。
おれは、胃袋を、掴まれたのか。
すごい破壊力。ほんと、こんなのされたら未来を想像しちゃう。
「…手伝うよ」
『ほんと?疲れてない?』
「うん、疲れてない」
『じゃあ、これをさ、拭いていってここに重ねていってもらってもいい?』
穂波が慣れた感じでできることを頼んでくれるので
初めてのことでもやりやすかった。