第19章 みかん
一度トレーを持って行き、
歯磨きやトイレなど済ませてもまだ時間があったので調理室へと向かった。
…邪魔になるだろうか。
ただ、小松菜の芥子和えが美味しかった、と。
それだけでも伝えたくなってしまっている。
調理室の前にきたところで黒尾さんの声が聞こえた。
「穂波ちゃーん、俺も大好きー! あとで愛し合おうなー! メシごちそうさま〜」
『うん!たっぷりとー!わたしもクロさん大好きー!』
………。
愛し合う、とは?
たっぷりと、とは?
…大好き、とは?
…………。
踵を返し、体育館へと足が向かう。
全てがはじめてのことで何も考えていなかったが、
穂波ちゃんには想う相手がいるのだろうか。
…それは黒尾さんだということか、
というかそれしかないだろう。
思えば昨日、銭湯へ向かうときの黒尾さんは随分穂波ちゃんと距離が近かったように思うし、
穂波ちゃんも心なしか頬を赤らめ恥ずかしそうにしていた。
…そうか。
ただ、そうだとしてもこの、気持ちというものが消えるわけでもない。
どうしたものか。
木兎さんはそれも知った上で、
あれほどまでにあけすけに想いを貫いているというのだろうか。
木兎さんらしい…
やはり、この感情はもうしばらく検証が必要だな…