第19章 みかん
「研磨さんなら、トレー持って調理室にいきましたよ!」
音駒の1年部員の犬岡が別のテーブルから揚々と答える。
「…はぁ。新婚さんはいつまでもお熱くて。
天然たらしの嫁は、今日も天真爛漫に笑顔を振りまく、と」
黒尾さんがよくわからないことを呟く。
黒尾「俺がわざわざいうことじゃねー気もするけど… いや言うことじゃねーよな……
今まであいつらはあいつらで解決してきたから放っておいた方がいいのか?
でも、赤葦の気持ちを考えると… うーむ、迷っちゃいますねぇ」
木兎「…にしても、ほんとにうめーーな!穂波ちゃんのごはん!」
黒尾「…そうなんですよ〜、この人数の分を任されても怯まず請負っちゃうんだから、できた嫁でしょ♡」
赤葦「あの、さっきから黒尾さんが言っている嫁っていうのは…」
黒尾「いやぁ、音駒男バレの彼女的存在だったんだけど、こうやって飯を作ってもらうともはや嫁といいますか…
おたくにも雪絵ちゃんやかおりちゃんがいるデショ。そんな感じ〜」
赤葦「いますけど、お2人は嫁ではなくマネージャーであって…」
黒尾「堅い。堅いよ、赤葦クン! イメージの話ですからぁ!」
赤葦「…はぁ、そういうものですか………」
結局黒尾さんの話はよくわからない箇所も多かったが、
最初の方のそれが好きということ、そして性欲…
これについては腑に落ちるものがあるようにも思う。
口付けたいとも、それ以上に触れたいとも、
初めて会った日から、もう会えないと思っていた時期、
そして会うことのできたこの2日間
正直何度も思った。
全て俺のものにしてしまいたい、とさえ思った。
そうか、俺はやはり穂波ちゃんのことを、好きなようだ。