第19章 みかん
廊下に行くと、腹を空かせた各校部員たちが
すでに廊下でたむろしていた。
俺と木兎さんがついて間もなく、朝食の準備が整ったようだった。
穂波ちゃんはご飯や味噌汁をよそうとこにはおらず、
茶碗蒸しを並べていく作業をしていた。
空いたところに置いていく、というような。
「穂波ちゃーん!おっはよー!」
大きな声で木兎さんが挨拶をしたので、
穂波ちゃんがこちらを向いたその時に一緒に会釈をする。
朝の挨拶はもう、済んでいる。
「なぁ、赤葦ぃ。赤葦が笑って会釈するのなんて俺初めてみたわ」
食事を半分くらい食べ進めたところで、
徐に木兎さんにそう言われる。
「…あ、そうですか。…意図しているわけではないのですが、そうですね。
…笑っているかもしれませんね」
「なぁ、赤葦も穂波ちゃんのこと好きなの?」
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「木兎さん、声が大きいです」
一瞬、辺りが静まり返ったような気がした。
特に音駒の部員のいる辺りから、何か、形容し難い気配を感じる。