第19章 みかん
ー赤葦sideー
穂波ちゃんの首筋に
昨日はなかったはずの赤い痕を見つけ、
それが随分赤みの強いものだったのでつい指で触れてしまった。
その瞬間、
『…んっ………』
今まで聞いていた声とは少し違う声が穂波ちゃんの口から溢れでた。
何故かはわからないがその声に反応するように
身体にぞくぞくとしたものが走り、
すぐそばにあった穂波ちゃんの手を握り締めていた。
…………。
少し冷静になり状況に気付いて手を離し謝ったところ
『…ふふ …あははっ 笑』
穂波ちゃんはなにがおかしいのか知らないが腹を抱えて笑いだした。
嫌がって怒られるか、気まずくなると咄嗟に考えたので
予想外の反応に拍子抜けしてしまい言葉が出ない。
『あー、ごめんっ ちょっと待ってね………』
「…………」
『…はぁー ふぅー………』
「…………」
『…っよし。 なんかわたしたち、ちょっと変なとこが似てるかもね?笑」
「…………」
『あっ、京治くんを変だとは思ってないんだけど、自分の変なとこと似てるというか…』
「…………」
『わたしもね、気付くと触ってるってことがよくあるの。 もー、しょっちゅう』
「…あぁ」
『そんなわたしの癖が、
こーんな落ち着いた京治くんと共通してるのかもって思うと可笑しくなってきちゃって…』
「…いやでも俺は、こんなこと今までないけど」
『…あれ?そっかぁ… わたしはね、綺麗なものに心を奪われてる時にやりがち。
…京治くんはなんでだろうね? また同じようなことあったら分かるね 笑』
「…その、赤い痕が気になって。痒みはないの?」
『…あっ これかぁ。 うん、痒みはないよ。 ありがとう』
「それならよかった」
『…うん、優しいね』
「いや、そんなことは…」