第19章 みかん
「誰かいるのかー?」
こっちに向けられたライトがどんどん近くなる
「穂波、降りて。そこのラックの影に隠れて」
『えっ でも…』
「いいから」
穂波は うん、と呟いて
脚から降りてささっと移動した
なにも考えてないけど…
…ま、いっか。このままで。
ガラガラッ
「…あ、ちょっと眩しいです」
「お前はー 音駒のセッターか?」
「あ、はい」
烏野のコーチだった。
お酒が入った顔してる
「なにしてんだ?こんなとこで」
「あー、ちょっと、まぁ、いろいろ」
「………あやしい。 あやしいが俺には関係ねー 早めに部屋帰って寝ろよー」
…うわ。ゆる。
なんだ穂波隠れる必要ないじゃん。
「あ、はい。ちょっとしたら出ます。お疲れ様です」
「おー」
ほんとにそれだけで去って行った。
「…………」
『…………』
「…隠れる必要なかったね」
『…うん 笑』
「ゆる」
『うん、バレー以外は関係ないって感じかな。おもしろいね』
「うん」
『…………』
「いこっか」
『…ん』
・
・
・
『あードキドキしたぁ!楽しかったぁ』
穂波はおもしろい映画を観たあとみたいな調子で言う
『酔いが覚めるってこういう感じかなぁ』
「…あー、 どうなんだろうね」
『研磨くんの、触ろうかとか口でしようかとか思ったけどしなくてよかった』
「………」
『………』
「………」
『…なんで黙るのぉ……』
「…それもよかったなぁって思っただけ」
『………』
「…ふ 笑」
…また、照れてる。
教室まで、またゆっくりと歩いて
2階の階段のとこで立ち止まる。
「おやすみ、穂波」
『…うん、おやすみ、研磨くん』
そっと口付けて、それぞれの寝る部屋に向かう