第19章 みかん
ー研磨sideー
銭湯のロビーでゲームをしてると
後ろから穂波がおれを呼ぶ声がした。
ちゃんと乾かしきってない髪の毛…
湯船であったまってほわんとした顔色、表情…
いつもの花のような笑顔。
あー会えた。おれの穂波。
少し話をして、銭湯をあとにする。
手を繋ぎながら歩くんだけど、
お互い感じてることは一緒なのか、
いつもよりだいぶゆっくりと歩いてる。
「…カレー美味しかった。 穂波のカレー、美味しい」
『…ふふ。よかったぁ。どっちが好きだった?』
「…どっちも好きだった」
『そっか。良かった。 …ふふっ』
「レッスンの後なにしてた?」
『…えっとね、あ、そうだ。
レッスンの後、保護者の方から嬉しい言葉や温かい言葉をいっぱいいただいて、
泣かないように堪えてたんだけど、ツトムくんに泣かされた』
「…ふ 笑 泣くように煽られたの?」
『なんか、最近ツトムくんお兄ちゃん色が出てきたんだよね。
抱擁感とあの、おちゃらけで、そうだね、煽られたのかも。笑』
「…それから?」
『あ!烏野高校の人たちにいっぱい会った』
「…あぁ」
そういや穂波の話してたな
『でも、翔陽くんには会えなかった』
「うん、翔陽はおれと犬岡といたから」
『そっか。そっかぁ。 …ふふ』
「烏野のリベロの人に話しかけた?」
『 ! …なんでそれを!』
「…お風呂上がってぼーっとしてたら烏野の人たちが来て、そんなこと言ってた」
『そうなの… みかん色の翔陽くんはもしかして髪色を変えたのかなって思って。
夕くんも、リベロだけど練習の合間とかぴょんぴょんよく飛んでたから…』
「…あぁ。 確かに」
『でも翔陽くん?って聞く前に名乗ってくれて、失礼な変人にならずに済んだ』
「…笑 失礼な変人」
『それから調理室に向かったら遅れて行ったのにみんな優しく迎えてくれた』
「…そりゃそうでしょ。遊びに行ってきたわけじゃないんだし。ちゃんとやることやってるし」
『………ん。 ありがとう。 嬉しい』
「………」