第19章 みかん
ー穂波sideー
ささっと髪を乾かして、
服を着て女湯の暖簾をくぐり抜けると…
ロビーの椅子には金髪プリンで猫背の愛しい後ろ姿。
…クロさん、大好き!
『研磨くんっ』
「…あ、穂波」
『迎えにきてくれてありがとう』
「…ん。おれも穂波に会いたかったし」
『わたしも会いたかった。触りたかった』
「…ん。 …なんか飲んで行ったりするの?ロビーで」
『…ん?』
「翔陽と犬岡は銭湯から出たら、牛乳を飲むものだって言ってた」
『…ふふ。 わたしは水筒の水で大丈夫。 …研磨くんは?』
「…うーん、飲むならりんごジュースがいい」
『うん、同感 …あ、翔陽くん、いるんだね』
「うん、途中からきた。 赤点とって補修と追試受けてたんだって」
『おぉ… あ、じゃあやっぱりあの時すれ違ったのが翔陽くんかも』
「………」
『よく跳ぶみかん色の翔陽くん』
「…ふ 笑 …とりあえず歩こっか」
『…うん、そうだね。歩こう』
手を繋いで歩き出す。
あぁ、幸せ。
朝から一緒にいたし、昨日も学校であったし、
明日も一緒にいれるし明後日からも学校で会えるんだけど…
会ってるのに触れない感じとか、
お互いそれぞれのやることがあったり、
人が多くていろんな会話があったりして、
こう、すれ違いじゃないけどすれ違いみたいな。
妙に恋しかった。
『あーもう、クロさん大好き!』
「え… なにいきなり」
『だって、俺迎えにいくから…って言ってたのに、研磨くんがいるんだもん』
「あ、そうだったんだ」
『沁みる』
「…ふ 笑」
学校までの道のりを、
ゆっくりゆっくり なるべくゆっくりと2人で歩いた。