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【ハイキュー】   “波長”   【孤爪研磨】

第19章 みかん






気がつくと、
雀田さんや白福さんはじめマネージャーのみなさんは調理室におらず
2人きりで話していた。





そら豆はとうに剥き終え、
穂波ちゃんは話をしながら、
流れるように調理や洗い物を進めていた。






『よし、仕込み完了。としよう。あとは明日のお楽しみ、ね?』

「…………」

『京治くん、手伝ってくれてありがとう。お茶飲む?』

「…あぁ、うん。いただく」






椅子を二脚出して、調理台でお茶を飲んだ。

抱きしめたいだとかいう高揚感の存在は否めないが、
それ以上にこの子といると落ち着く。安心する。








「今朝は、驚いたね」

『…あぁ、うん。ほんと、びっくりしちゃった。すごいね』

「そうだね…」

『でもさ、書店で会ってお話ししてお茶して一緒に展示見て…
その間、ずっと穏やかな空気に包まれてて、心地よくって。
だから、なんだろうな…
最初こそ驚いたものの、今はこうやってまた当たり前のように時を過ごせてる』

「…あぁ」

『…でもそれって、それこそが、すごくすごいことかもって思い出すと
またちょっと興奮してきたりして…
でもそんな自分を、京治くんだもん当たり前じゃんって傍観してる自分もいる』

「………」

『すごいね、わたしたち。 京治くんに会えて嬉しい』

「………」




偽りのない、言葉。
穏やかな口調。
柔らかくて綺麗な笑顔。




俺をまっすぐに見つめる瞳も、
瑞々しく柔らかそうな唇も、
動くたびに綺麗に揺れる長い髪も、
布に覆われてみることのできない身体も…





全て俺のものにしてしまたいという、
事実上あり得ない想いが湧き上がる。

自分以外の誰かが俺のものになることなどないというのに。






「俺も、嬉しいよ」

『…ふふ、それは嬉しい。 嬉しいの無限ループに入ってくね』

「………」

『あ、京治くん、動かないで』






そう言って椅子から降りて
俺の太腿に手をつき顔を近づけてくる






目元に指が触れる






『まつ毛が、目に入りそうだから… もうちょっと待ってね』






生ぬるく湿った空気が頬にかかる






…抑えろ、自分。






…抑えろ。






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