第19章 みかん
『ふぇっ… クロさん…?』
…梟谷の中に馴染みのクロさんの名前が挙げられたからか、
ついクロさんに反応してしまった。
かおり「お。黒尾くんに反応」
雪絵「赤葦はまとまったらまた話します、っつってたけどぉ」
真子「まじめか!笑」
『………』
清水「あ、お疲れさまです」
廊下の方を見ながら潔子さんがそう声を発した。
目線の先を追ってみると…
雪絵「赤葦じゃ〜ん」
京治くん。
赤葦「お疲れさまです。少し失礼してもよいでしょうか」
清水「はい、どうぞ」
真子「赤葦、まじめか!笑」
英里「噂をすれば、ってやつだねぇ。すごい」
梟谷の人と部員同士での話かな、
今は話しかけるまい。
赤葦「穂波ちゃん、お疲れさま」
『ふぇっ?』
かおり「ぷっ 笑 …ごめん、気にしないで」
「あ、手は止めずに聞いてもられば…」
『あ、うん。 あ、京治くんもする?よければ。 そら豆かわいいよ』
「そら豆かわいい…… あ、うん。じゃあ、する」
京治くんはわたしのやってることを見て、
同じようにぽすぽすとボウルにそら豆を剥いていく。
「今朝、ほんとにびっくりして。 …あ、でも嬉しかった」
『うん!わたしも驚いた。 …ふふ』
「…昼食も夕飯もすごく美味しかった。ごちそうさま」
『…ん。 嬉しい。 ありがとう』
「………」
『…あ、京治くんの好きな食べ物は何ですか?』
「俺の… 俺の好きな食べ物は菜の花の辛子和えです」
『おぉ。なかなかピンポイント』
「…好きな食べ物ってピンポイントになるものじゃない?」
『…あぁ、まぁ、そっか。 …菜の花はもう流石にないなぁ……
明日、小松菜を芥子和えにしようかな。 …それじゃダメ?』
「…えっ」