第19章 みかん
ー穂波sideー
いつもは日中にあるクラスを今日は夜に持ってきたので
普段迎えにこないお母さん方もお迎えに見えていた。
あまりお喋りしたことない方ともお話ができた。
そして皆さん、こちらの都合で時間を変更したにも関わらず
とても優しくお話ししてくれて
レッスンを始めてからの生徒さんの様子も嬉しい言葉ばかりかけくれて
顔はもう、綻びまくり。
気を緩めたら涙が溢れるのは間違いなくって、かなり堪えた。
みんなを見送ってからカフェにも挨拶に行くと
「穂波ちゃ〜ん、音駒までの夜道ご一緒します〜」
休憩に入ったツトムくんが声をかけてくれる。
『あはは、じゃあお願いします〜♡ …ちょっとクロさんにメールいれるね』
クロさんに遅れてしまったことの謝罪と今から出る旨のメールを送って
ツトムくんと音駒への道を歩き出す。
「穂波ちゃん、ほんと保護者の方からも評判がいいってスタジオの人から聞くよ〜」
『えぇっ あぁーもーう…』
ツトムくんのふいの一言で涙が溢れ出る
「ひひっ 穂波ちゃん絶対泣かないようにしてると思って、ごめん、わざと」
『…………うぅ…』
「泣いてると隙ができるから、 …なーんつって」
『…………うぅ…』
「嬉し涙は堪えなくていいでしょ、音駒戻る前に流しときな」
ツトムくんはそう言うと
わたしの涙が落ち着くまで黙って隣を歩いてくれた
…落ち着くまで、というのは音駒の正門に着くまで……