第19章 みかん
ー月島sideー
夕飯を食べて風呂に行く前にお腹を落ち着かせようと
夜風に当たりながら校舎の外を歩いてたら音駒のマネージャーらしき人が
年上ぽい長身の男性と門のところで話してるのを見かけた。
男は、僕の兄と同じくらいの歳だろうか
なんだ、彼氏いるのか。
顔立ちの整ったちょっとチャラそうな男。
頭ポンポンとかされてるし…
…なんだ、とか思ってる僕、なんなの?
山口「あ、あの人、音駒のマネ代理って谷地さんが言ってた人だ」
月島「代理?」
山口「部員じゃないけど頼まれてやってるんだって。
今日の昼食も夕食も、あの人の味付けらしいよ。美味しかったよね!」
月島「うん、まぁね…」
確かに音駒に来て食べた2食はどちらも、そしてどの料理も美味しかった。
既製品の味でもなく、味付けも濃すぎず薄すぎず
それでいて部活の合宿らしくタンパク質多めの献立。
…多分いつもより僕も多く食べた
山口「ツッキー、あの人気になるの?」
(練習中、結構目で追ってたと思うんだけど…)
月島「はぁ!?山口何言ってんの。やめてよね」
山口「ごめん、ツッキー。 …穂波ちゃん、って谷地さん言ってたから1年生かな」
月島「…ふーん。ま、僕には関係ないけどね」
地毛の色ではないだろう茶色い髪は
染めたというより焼けたという感じを受ける。
プールの塩素によるものか、海水によるものなのか。そんな感じだ。
でも、痛んだ感じはなく、程よい艶はあって健康的で品がある
肌の色もよく焼けていて、でも瑞々しくやはり健康的
身体つきも痩せても太ってもなく
かと言って普通体系って感じでもなく
…ちょうどいい。 …健康的。
そればっか言ってるじゃん、僕。
遺伝子が、健康的なものを求めるのかもしれない
強い子孫を残すために。
…だから、見てしまうのか
…………。
はぁ!?
何考えてんの僕。
子孫を残す? はぁ!?
あー、馬鹿馬鹿しい。
現にあの人は、あのチャラそうな人と
あの、かわいい笑顔で話してるっていうのに
…………。
…あの、かわいい笑顔?
「山口、銭湯の場所聞いてる?」
さっさとお風呂入って寝よう。
思考回路がショートしてるとしか思えない。