第5章 夏
「具体的に動き出してんの?その、レッスンする側」
『うん、少しずつ。教わってる先生に相談して、年齢層とか時間とかそういうの。練ってる。』
「…ふーん。いいじゃん。そのままでな。研磨も部活いそがしいんだ?」
『なんか、昔強かったとこみたいで、練習いっぱいしてる。
また強くなるかもって言ってた。
それもあって、わたしももっとできるんじゃないかなって思ったんだよね』
「おー、兄ちゃんは嬉しいぞー!
いい女になってってんなー!」
そう言ってお兄ちゃんはくしゃくしゃと頭を撫でてくれた。
6つ歳の離れたお兄ちゃんは
他でもないわたしの初恋の人だ。
小さい頃から優しくてかっこよくて、
サーフィンもスケボーも上手で、
極新空手初段で強くって…
たくさん遊んでくれるお兄ちゃんに小さなわたしは恋をしていた。
今もその、好きで憧れに気持ちは消えないままちゃんととってある。
切なさも、きゅんきゅんもない、小さなわたしの無邪気な恋心。
こうして自分が少しは成長した今も、
お兄ちゃんはやっぱりかっこいい。
肩の力がいつも抜けてて、でも力強い。
お兄ちゃんが海外に住み始めて、
毎日会えなくなってから
こうしてたまにたっぷりと一緒に過ごせる時間はわたしにとって、かけがえのない時間のひとつ。
「お土産はもう揃った?おれ今週マーケット回るけど一緒に行くか?」
『行きたい!お願いしようと思ってたの』
「おー、じゃ今からヒロのマーケット戻ってゆっくり見るか。
今日夕方カイムビーチの方でもマーケットあるから、そっちも行こか」
『やった。ありがとう』