第19章 みかん
ー穂波sideー
午後、仕込みを終えて練習に参加しに行く。
芝山くんからノートを引き継いで、
スコアを書いていく。
今回は2日だけだし、主にこれがわたしの仕事かな。
あとは日頃の練習を手伝わせてもらってる時と一緒で、
ドリンクを渡したり、タオルを渡したり、練習後に洗濯回したりとかかな?
時折、気になって烏野の方を見るんだけど、
みかん色の髪の毛の人がいない。
研磨くんみたいに染めてて、色を変えたのかもしれないと思って、
間違えてお昼に廊下で声をかけてしまった人は、
夕くん、という人で夜久さんと同じリベロの人だった。
ぴょーんと跳ねる姿を見て、わたしの目にはよく飛ぶなぁと映ったし、
クロさんがチビちゃんと言ってたのが頭に過ぎったのもある。
失礼だけど…
──『こんにちは! わたし音駒高校の…』
真っ直ぐに立って目をじっと見据えられる。
男気がありそうで、確かにおもしろそうな感じもするけど…
でも、研磨くんがおもしろい、と形容する感じかなぁ…?
ぼんやりと思いながらも
いつもの勢いで自己紹介をしそうになったところで、
「西谷〜!」
目の前の彼の名前を呼ぶ声がした。
「おー、力!」
なにかやることがあったようで力さんという方と行かなきゃいけないようだった。
「すんません、俺行かなきゃなんで。 …俺、西谷夕っす! 音駒のリベロすげー尊敬してます!」
『あっ、音駒のマネ代理できました運天穂波です。いきなり呼び止めちゃってすみません』
「穂波ちゃんっすね!よろしくっす!じゃ!」
そう言って、颯爽と去っていった。
…あぶない。
翔陽くん!?
って勢いよき聞くところだった。
間違えて、なんでそう思ったの?ってなって、
髪の色は聞いてた色と違うけど
よく飛ぶチビちゃんって聞いてたので…
なんて言えないし…
わたしは背なんて気にしないけど、
気にする人はやっぱり多い。
それにバレー部だとそういうことも多そうだ。
…勢いで話しかけちゃう性分はしかたないにしても、
無駄に人を傷つけることはしちゃだめだ。
気をつけよう。