第18章 くしゃみ
ー穂波sideー
「美味しい と おもしろい を いいな が繋げてるの?」
『へっ?』
「コーヒーが美味しいかと聞かれて、
美味しいと答えたら、おもしろいで完結した」
なんと、なんという質問をさせてしまっているんだ…
わたし馬鹿丸出し…
『コーヒーが飲めるのいいなぁ、って。
いい香りだし、どこのお店にもあるし、コーヒーありきのスイーツも多いし』
「その、いいなぁ、か」
『サイフォン式っておもしろいは、そのまま。見ていたくなる』
「…なるほど」
『いやそんなに考えてないから、そんなに考えないで。笑』
「………ごめん、癖で」
『癖?』
「ふいに訪れる不可解なことを、理解しようとしてしまうというか…」
『そっか、考えるのが好きなんだね』
「………うん、まぁ、好きなのかもしれない」
『京治くんはこうして誰かとお茶するのが好き?』
人のことを知るのが好きなのかな。
「…いや、特に」
『あ、そっか。笑』
「…普段はどんな本読むの?」
『んーとね………』
淡々と、静かにでも話は尽きず、
結構長い時間を京治くんと過ごした。
なんだか旅先みたいだ。
一期一会。
もう会うことはないだろうけど、
たしかにこれから先、ふとした時に思い出すだろう出会い。
『京治くん、わたしギャラリー閉まる前に覗いてこようかな』
「ギャラリー?」
『うん、上の階にあったの』
「…1人でみたい?」
『へっ』
「あ、いや、一緒に行ったら迷惑かな、と思っただけで…」
『あ、ううん。そんなことないよ。京治くんも行く?』
「…じゃあ、一緒に行こうかな」
…うん、やっぱりすごく旅っぽい!
『うん、行こっか』
こんな風に京治くんと行くことになるなんて
水墨画でも展示されてたりして…って思ったりしたんだけど、
開催されてたのは片岡球子さんの版画展だった。
構図も色使いもアグレッシブ。鮮やか。
イメージ通りにはいかなくて、
いい意味で的外れで、
イメージを超えるものが待ってた感じもまた、旅のようだ。
…思いがけない一期一会。