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【ハイキュー】   “波長”   【孤爪研磨】

第18章 くしゃみ





そうそう、
何度来てもどの書店に行っても目に止まるタイトルとか作家さんってのもある。
そういうのをそれまでずっと見過ごしてきておきながら、
ふと手に取り家に連れて帰る瞬間があって。

やっぱり一期一会だなぁって思う。





そう、この作家さん。
いつも目に止まるんだけど読んだことない。






…その中でも一番目を惹くタイトルに手を伸ばす







「あっ」

『あっ』









同じタイミングで同じ本に手を伸ばした人がいて、
背表紙のとこで指が一瞬重なった。








『すみません、…あ、どうぞ』

「いえ、そんな。 どうぞ」

『………』

「………」





黒の短髪、グレーがかった深い緑の切れ長の瞳。
落ち着いた雰囲気の漂う男の人。

大学生かな。





『…ふふ。 いっぱい選びましたね。』






10冊近くの本を腕に抱えるように持ってる。







「あぁ、つい。 つい、選びきれずにこうなってしまいます」

『うん、気持ちはとってもわかります』






…低いトーンの、落ち着く声。
引っ張られるように敬語を喋ってしまうし、背筋がのびるような心地。
でも、肩は凝らないような、安心できる空気感。







「洋書も、読まれるんですね。」

『…あ、はい。 
ここ、初めてきたんですけど洋書が充実していて、選ぶのに随分時間を費やしました』

「そうですか………」

『…わたし、この作家さん読んだことがなくって。他の作品、読まれたことありますか?』

「えぇ、数冊読みました」

『そっか、じゃあ読んだ中で1番好きなのを教えてください。わたしは今日はそれを買っていきます』

「…………」

『…ふふっ 遠慮しないでください。
こんな風にお話する機会って滅多にないです。
一期一会って感じがすごくします。もし良ければ、おすすめ、教えてくれませんか?』

「…そうですね、それでしたら俺はこれが一番好きです」






目の前の男の人は、迷わず一冊を選んでくれた。
お礼を言ってその本を手に、その場を去る。







静かに水の中を歩くような時間だと思う、書店での時間って。
リラックスしながらも、どこか研ぎ澄まされてて…

邪魔しちゃいけないとか思ったりして。








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