第16章 獅子
「研磨さんには穂波ちゃんはおれのだから勘違いするなって言われた。
でもだからって好きになるなとは言ってないって」
『………』
「そういう風にはっきり言って。俺あんま頭良くないから」
『………』
はっきり、何を言いにきたんだっけ。
わたしは言葉がいつも曖昧でふわっとしてると自負してる。
…あぁ、どうしよう。
「そんな風にもじもじされるとまた抱きしめたくなるし、唇奪いたくなります。
それをされたら穂波ちゃんはいやってこと?」
…あぁ、もうどうしよう。
なんて言えばいいの。
『嫌じゃない。でもしたくない。 …これは曖昧ですか?』
「………」
『リエーフくんのことは好き。まだよく知らないけど、すごく、魅力的な人だと思う。
楽しいし、ドキドキもする。だから、嫌ですか?と聞かれたら、嫌ではないです』
「………」
『でもわたしがキスしたいのは研磨くんだけなの。研磨くんだけにしかない、好きがあるの』
「………」
『キスしてくれたことも、今朝のこともごめんねって思わないでいいの。
嫌じゃない。ドキドキするのは好き。 …でも、えっと、もうできない』
「………」
『あー違うそうじゃない。
えっと、わたしが曖昧な態度をとったせいで、
リエーフくんに期待を持たせてしまったことごめんなさい』
「………」
『…でも、運命だなんて言ってもらえて嬉しかったです。ありがとう』
「 ? 」
『………』
「穂波さんは研磨さんのものなんですか」
『うん、わたしは研磨くんのだよ』
「はい、わかりました」
『…えっ』
「好きでいるのは自由だそうです。研磨さんに直接言われた」
『………』
「合意じゃない手出しはダメだそうです」
『………』
「俺、まだ伝えてないんですけど、いいですか、伝えて」
『うん?なに?』
「俺、穂波ちゃんのこと好きです」
『あぁ…』
わたし、想いを告げられたわけでもないのに、
断るみたいな物言いしちゃった。
だからリエーフくん ? って顔してたんだ。