第16章 獅子
ー穂波sideー
昼休み、お弁当をさっと食べてリエーフくんのクラスに向かう。
…行くねとも言ってないのに、いるのかな。
外出てるかもだよね。
…というか朝、ほかの1年生にも会えたはずなのに全然挨拶できなかったな。
顔も見れてない。
まぁ、急ぐことでもないか。
1年3組って言ってたよね…
あ、いる。
銀色の髪、すらっとした長身猫背のシルエット。
見つけやすい。
「あ、あの。2年の運天です。
リエーフくんのこと呼んできてもらえないかな?」
入り口のそばにいた女の子に声をかけ、
廊下の窓から外を見ながら待つ
「穂波ちゃん!」
『あ、リエーフくん。お昼たべた?』
「うん、食べた。ここで話す?」
『うーん、歩きながら話そっか』
「うん」
『………』
「夜久さんと猛虎さんに叱られた」
『あ、ごめん。朝のこと?』
「そう。無理矢理抱きしめた」
『…無理矢理だったかな?』
「でも嫌がってたでしょ」
『そりゃ嫌だよ、あんなとこで恥ずかしい。子供みたいに抱き抱えられて』
「え!俺だからじゃないの?場所の問題?」
『…あー、んーと。今朝のは場所の問題。
リエーフくんとハグすることは嫌じゃないよ、今朝のはハグじゃなかったけど』
「………」
『あ、わたしね、話があってきたの』
「うん、なんすか?」
『あ、その前に、リエーフくんとわたしってキスした?』
「え!しましたよ!出会った日に。覚えてないの?」
『…それが、ちゃんと認識できてないの。あの日わたしぼーっとしてて。
唇に何か触れたな、とはその時も思ったんだけど…』
「へー、そういうこともあるんだ」
『そう、それでね。それをわたしが認識してなかったせいで、
リエーフくんとはキスできないよって伝えなかった』
「………」
『運命もね、だから恋愛とかじゃない運命だと捉えちゃってたの。
…それであの日のわたしの態度で、こう、リエーフくんと行き違っちゃってるかなって』
「はっきり言ってください」
『あっ …はっきり …えっと……』