第16章 獅子
ー穂波sideー
朝、なんとなく少しだけ早く家を出て、
いつもより早い電車に乗れたので、
バレー部の部室の方へ行く。
研磨くんに少しでも早く会いたくなる時がある。
部室の前で待ってみる。
待ち伏せって、
わくわくとどきどきとそわそわと。
そわそわは、迷惑じゃないかなって思ってそわそわする。
そう思いながらも、待っていたくて…
「あれ、穂波ちゃん。ここに来ちゃったのね」
『あ、クロさん、おはよう。朝練お疲れ様』
「…誰に用事かな?」
『…えっと、研磨くんです』
「…なんで敬語。笑 なぁ、俺もやっぱキスしてもいい?」
ニヤニヤいたずらっぽい顔で、覗き込んでくる。
『クロさんっ!』
「…研磨は後ろからくるけども」
『うん』
「他にもくるから、玄関にいた方がいいかもよ?」
『ん? …というかクロさん俺もってなに?』
「いやぁ〜それがそのですね…」
「穂波、おはよ」
『あ、研磨くん、おはよう。着替える間待っててもいいかな?』
「うん、いいけど… ちょっとあっち側で待ってて」
『…?』
「あ、もう手遅れ。 …おれさっと着替えてくる」
『あ、うん。汗冷えちゃう』
「ぅわーーーー!穂波ちゃーん!会いたかった!」
そう言って向かってきたのは、
高校のジャージをきたリエーフくん。
…朝練帰り? 部活やってるんだ。
『あ、リエーフくん!おはよう!ひさしぶ… ひゃあっ!』
リエーフくんは駆け寄ってくると、脇の下に手をいれて
わたしをひょいっと持ち上げた。