第16章 獅子
「おれ、いっぱい喋った」
額を寄せて見つめ合う
『うん』
「穂波、すき」
『うん。わたしも大好き』
「…ん」
唇が触れるか触れないの距離で
鼻をかすめたりしながら、互いの呼吸を感じ合う
どちらともなく唇を重ねる
優しく啄むように、確かめるようなキス
何度も何度も口付けた
「…ん」
『んー』
離れたくない
研磨くんに跨ってるから、
やっぱ身体は反応して熱くなってきちゃう
「もう行かなきゃね」
そう言って研磨くんはわたしの髪の毛を避けて首筋にキスを落とす。
そしてそのまま強く吸い付いた。
「おれの」
呟きながら指でなぞる。
掃除の鐘は話してる途中、とっくの前に鳴っていて…
きっとそろそろ5限が始まる
…今のは、喧嘩だったのかな。
いや、喧嘩じゃなかったな。
研磨くんが冷静だった。
そしてわたしに怒る理由がなかった。
…こんなわたしのある意味しょうもないような、呆れるようなことに、
(目の前に男の子がいるのにキスされてることに気付かないなんて!)
いろんなことを考えて、いっぱい喋ってくれた。
甘えればいいからと研磨くんは言うけど、
そしてそれはとても暖かくて嬉しいのだけど、
やっぱりそのせいで研磨くんに辛い想いをさせちゃうなら
どうにかできることはしないきゃいけないんだ。
…それでもやっぱり研磨くんの言う通り、
習性みたいなものってそうそうどうにかできることでもなくって…
無限ループの考えに陥りそう…
とりあえず、今は今を。
それから明日、リエーフくんにちゃんと伝えよう。