第16章 獅子
ー穂波sideー
「ごめん、話してるうちにイライラした」
研磨くんは謝る必要なんてないのに。
ごめんって言わせるのって辛い。
穏やかに淡々とでも優しく
研磨くんは話してくれる。
そして大事なこと。
リエーフくんとわたしで行き違いがあるだろうことを指摘される。
…そっか、キスをして運命って、それはそういうことだよね。
わたしは一体何をしてるんだろう。
研磨くんにもリエーフくんにも失礼だ。
『それからやっぱり、ごめんね。気をつける』
研磨くんにもう一度ちゃんと謝って、
そしてありがとうを伝える。
「…ふ 笑 多分、気をつけようがないことなんだよ、それが穂波だから」
『…でも気をつけないと』
「前にも言ったでしょ。起きる時は起きる。穂波は感受性が豊か。
人の流れとか、自然からとか、よくわかんないけどいろんなところからいろんなもの、受け取ってる。
そういうとこも好き。だから気にしすぎない方がいい」
『………』
「ていうかそもそも、サーフィン行って眠い中走って学校着いたら
初対面で手繋いでくるようなひとに会うってそうそうあることじゃない。
だからやっぱ気をつけようがないよ。
前日にサーフィンしてなかったら、そこまでほわほわしてなかったかもしれない。
車で寝れてたら、1限諦めて歩いてたら、そいつの目が違う色だったら…
何かが違ってたかもしれないけど、そんなの気をつける気をつけないの話じゃないでしょ。
やっぱ起きる時は起きる。
だから、もう起きちゃったならこうやって話せばいんだと思う。
おれも、わけわかんなくなってイライラしたりもしちゃうけど…
でもやっぱ話せばいいんだと、思う。
…わかんないけど」
…うん、そうかな。
え、でもやっぱり
「甘えればいいから。 …そこはうじうじ考えなくていい。 明日、誤解ときにいこ」
『はい』
「…ん。 …ここ座って」
研磨くんはあぐらをかいたまま、脚をとんとんってする。
吸い寄せられるように研磨くんに跨って座る。