第16章 獅子
ー研磨sideー
『わたしが好きなのは研磨くんなんだもん』
屋上で裸足になってぺたぺたと歩きながら近づいて、穂波はそう言った。
あぐらをかいてゲームをしてるおれの前で立ち止まると、
屈んで顎に手を添え、そっとキスをしてくる。
ゆっくりと唇が離れ、
穂波の顔が目に映る。
「…?」
唇を指で押さえて、
ぽかん、と不思議そうな顔でこっちをみてる。
『あれ…?』
「…?」
『…ん?』
「…」
『…研磨くん、わたし………」
「………」
『キスしたかもしれない』
「………」
『………』
穂波は目を瞑って記憶を思い起こそうとしてるみたい。
…どういうことだろう
でもなんとなく、いつどこで誰とかってのは想像がつく。
そいつの顔も名前も知らないけど
『ごめんなさい。研磨くん。 わたしの不注意です』
「………」
『…でも、まだほんとにしたかわからない。確認してくる』
「…今?」
『…んー、うん。今行ってくる』
「…だめ。行かなくていい」
『………』
「おれといて」
『………』
穂波の手首をぎゅっと掴む。
ていうか、まだ説明聞いてない。