第5章 夏
マヒナおばあちゃんは相変わらずだった。
優しくて深い目。
綺麗な皺の寄った手。
「穂波、おかえり。よく来たね」
いつも、この言葉で出迎えてくれる。
『トゥートゥー、ただいま!』
そう言って大きなハグをする。
トゥートゥーは、おばあちゃんって意味。
マヒナおばあちゃんと座ってお茶を飲んでいるときに、
「綺麗になったね。素敵な人に、出会えたんだね」
と言われた。
マヒナおばあちゃんはそういう、
目に見えないものをわかってしまうような、
きっとそういう人。
『うん、出会えたよ。すごく、優しい素敵な人だよ。』
それだけ伝えれば、
いや伝えなくても、マヒナおばあちゃんには全部伝わってる。
そんな気がする。
「穂波!明日の朝、早速海行く?」
自分の家に帰る前にケンが聞いてくる。
『行く!行く行く!』
「じゃあ、5時でいい?時差ぼけ、平気そう?」
『ん!眠かったらビーチでゆっくりするし、サーフできなくても海に行きたいから!大丈夫!』
「オッケー。じゃあおれもう帰るわ!また明日なー!」
『うん、ありがとう!また明日ね!』
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朝4:30
ね…ねむい…
水着を着て、上からワンピースを羽織る。
研磨くんの家に行った日に着たワンピース。
一緒にいた時間を思い出して、またひとりほわほわとする。
日本から持ってきていた干し芋をポシェットに入れて、
水筒とウェアと一緒に玄関に置いておく。
バナナを一本もらって荷物を持って外に出て、
ウッドデッキでケンを待つ。
マーケットにも連れて行ってもらおう。
あぁ、海がそばにある暮らし。
大人になったら、海の近くにきっと住むんだ。
5時過ぎにケンがきて、
海へ行った。
波はあまりなく、今日のわたしにはちょうどよかった。
ぷかぷかと浮いたり、気まぐれに乗ったり。
あとは浜でケンが波に乗るのを見て過ごした。
9時ごろ海から上がって、
そのままマーケットに行った。
朝ごはんを軽く食べて、
食材をちょろちょろ買って家に帰った。