第16章 獅子
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昼休み、屋上で弁当を食べてる。
穂波はおむすびとサラダを食べてる。
おじいさんの家からきたからかな。
すごく簡単な弁当というか
穂波曰く
今日の中庭はそわそわした感じがするそうだ。
入ってきたばかりの1年の空気のことを言ってるのかな
「…玄関でなにがあったの?」
『そう!今日ね、本当は1限が終わるのには間に合ってたの。
…駅から走ってやっと玄関ついたー!って思ったら
視界の端っこにヒョウみたいな影がさ、ひゅんって』
「………」
『靴履き替えて歩いたら、1年生の下駄箱から背の高い男の子が出てきたの。
大きな歩幅で軽々と歩み寄ってきて、こう、こう言う感じ』
穂波はおれの両手をとり握りしめる
『こうやって話しかけてきてくれたの』
…確かにこの握り方にはなんだろ、いやらしさとか感じない
どっちかっていうと勧誘とか励ましみたいな印象は受けるけど
でも初対面でそれって普通ヒくとこだよね
「…なんて?」
『それがなんて言ってるのか全然耳に入ってこなかったんだ。
銀色の髪の毛とエメラルドグリーンの瞳があんまり綺麗で吸い込まれてしまって』
「………」
…すこし危険な感じがするけど
『素直で人懐っこそうな子だった。研磨くんとは交えない感じかもしれないけど』
「…それで?」
『運命です!って。俺たち運命です!って』
「………」
『進級早々遅刻して、同じタイミングで校舎に駆け込んで、遅刻同盟を組んだ』
「ちこくどうめい」
『わたしの勘違いかもだけど、彼もきっと遅刻魔だと思う。道草が多そう』
「…へぇ」
『だから、2人で話してたら1限が終わっちゃってたの』
「………」
『廊下から高木先生に呼ばれて気付いて、2限に間に合った』
「…間に合ってはなかったけど」
『…だね。気をつけなきゃ』
「高木先生なんて?」
『他の男となにしてんだー!って。そういうのばっか言う。高木先生はほんとに研磨くんのことが好きだよね。
…でもわたしといたからって、1年の彼が目をつけられるのは不憫だから、
今回だけは大目に見て!って頼んでみた』
…なんか、すごい誤解を生んだり
誤解を生みあってそうな感じがするんだけど気のせいかな
…まぁ、いいや