第16章 獅子
ー研磨sideー
2限に少しだけ遅れて穂波がやってきた。
いつもと変わらない穂波。
先生にぺこりと頭を下げておれの前の席につく。
土曜の夜、急遽おじいさんの家に行ってくると言ってた。
志田下だっけ。
まぁ、遅刻の理由はサーフィンでしょ。
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『研磨くん、無事だった?』
授業が終わるや否や、振り返って穂波が言う。
「…へ?」
『高木先生。 …芽衣も違うクラスになっちゃったし』
「あぁ、まぁ。新しいクラスだからか、前の20%くらいだった」
『あ、そっかぁ。よかった』
「海どうだった」
…海の話をしてるときの穂波が好き。
焦がれるような目で、きらきらとでも、穏やかな表情をする。
きらきらしてるけど穏やかって、
太陽を浴び水面を光らせた、凪いでる海みたいだ。
花や太陽や海や風や。
やっぱり穂波は自然が似合う。
『さいっこーだったよ。日の出前から海に行って。本当に幸せだった』
「…ん。よかったね。 そうだアキくん」
『そう、お兄ちゃん!』
「すごいね。 …次はいつから?」
『次は11日から。西側で』
「…どんなとこ」
『パワフルなとこ。あ、時間あったら見てみると、ベルズと波が全然違うからおもしろいかも』
…ベルズってとこもおれからしたらパワフルって部類だと思うんだけど
『なんか波がごつごつしてるイメージ。ベルズは速くて長くて滑らかでスマートな感じ。
次のとこはどごぉーん!ぐわぁぁぁー!って感じ。 …わたしのイメージだけど』
「………」
『そうだ、さっき玄関でおもしろいことあったんだよ。また後で話すね』
そう言って穂波は次の授業が始まる前に汗を拭いてくる、
といって教室を出てった。
…どごぉーん!ぐわぁぁぁー!ってなに。
まぁ確かにパワフルそうだけど。
重たい感じかな、獰猛そう。
…ってなんでおれちょっと理解できそうになってるの