第16章 獅子
それから流れるように会話が始まって、
終始穏やかな声色と、
物怖じしない態度、
それから花畑みたいな笑った顔。
そのどれもが完璧だった。
穂波ちゃん。
初めから穂波でもいいけど
穂波ちゃんから穂波に変わってくその感じを味わうのもいいと思った。
ここは日本なんだから!
…髪の毛が濡れてるんだよな。
でも寝坊してシャワー浴びたってほどびしゃびしゃじゃない。
綺麗な髪の毛にそっと手を添えて話してると
「運天ーーー!」
廊下の方から穂波ちゃんを呼ぶ声がした。
若い、男の先生。
穂波ちゃんは仲良さげに話をしてる。
他の男とか、先生に会いたかった、
だとかちょっと気になるワードが耳に入ってくるけど…
…え、もしかして先生とそういう関係?
先生がどっか行ってから気になることを聞く。
気になることは全部聞く!
「俺のことは見逃してってどういう意味スか?」
『…ん?そのままの意味だよ。
…って遅刻同盟2人だけで話してると、いつの間にか2限も終わっちゃいそうだよ。
はい、じゃあリエーフくん、教室行こ!』
そのままの意味…?
見逃すってのは何から見逃されてるんだー?
あーもうわからなくなってくる!
でももう行かなきゃいけない… だから
「あぁ、うん、また会える?」
そう聞いたら
『…へ?運命なんでしょ? 当たり前じゃん。見かけたら声掛けてね〜 またね〜!』
さらっとそう言って穂波ちゃんは階段の方に走って行った。
…やっぱ運命だよこれ 運命、すげぇ