第16章 獅子
でもこの子は、走ってたからか顔を紅潮させて、
ほわんとした表情で俺の目をじーっとみてる。
手も繋いだまま。
…俺のこの距離感、全然怖がってない!
それから近くでみるとますますかわいい!
…どんな声だろう。
声を聞いてみたい。
『あ、えっと、綺麗な色の目だね。吸い込まれちゃいそう。 …それに髪の色も、すごく、綺麗』
落ち着いた柔らかい声。
心地いい声だなー
俺の目をじっと見て離さない。
吸い寄せられるように顔が近づいていく。
腰をかがめて、膝もかがめて
そっと唇と唇を合わせた。
柔らかくって暖かい。
それから、髪の毛からかな、ゼラニウムの香りがする。
俺の母さんの好きな香り。
俺も、好きな香り。
………思わずキスしちゃったけど、反応なし
『………?』
目をじっと見つめたまま小さく首を傾げる。
目の前にいる俺の運命の相手は
時間差で微かな反応を示した。
突然のキスにぼけっとしてるのか?
でも拒否の色は見えない!
「運命です!俺たち、運命の出会い!」
『…うんめい?』
運命でしかない。
そう思った。