第15章 さくら
「穂波のカレー食べたかった」
『…あれ?今日カレー作るって言ってたっけ?』
「なんか、歌ってた。小さな声で。夜はカレーって」
『うそ、いつ』
「うそ」
『…もー!』
「…ふ 笑 なんとなく。なんとなく今日カレー作ってくれるんだろうなって思ってた」
『そっか』
「…ゲーセン、これからは1人で行く」
『えぇ、なんで』
「…だって、おれ1人でやってたし」
『でもみてるの楽しかったよ』
ゲームを、じゃなくて研磨くんを。
「でも、ゲーセンだと他にやることないでしょ」
『あぁ、それはまぁ、確かに 笑』
「だから…」
『今日、わたし話しかけなかったの。次からは話しかける。
ゲームの合間とかに。 …それでいいかな?』
「…なんで話しかけなかったの」
『なんとなく。見てたかった。没頭してる研磨くんを』
「…ふーん」
ゲーセンのゲームに没頭してる研磨くんは
少年のようで可愛いんだけど
頭のどこかで家のゲームとは違ってタイムリミットがあるって警鐘がなってるんだろうなというか、
なんだろう、切羽詰まったって程ではないけど
それに近いものがあって
それに相まって相変わらずの冷静な目とか綺麗な指とか…
とてもとても魅力的だった