第15章 さくら
ー穂波sideー
人の多い帰りの電車のなかで研磨くんは
さりげなく身体を抱き寄せてくれた
研磨くんのこの、“ただそれだけ感” がいつになってもじわじわとくる。
家について
2人でゆっくりとお風呂に浸かって
都会の喧騒に知らぬうちに疲れていたわたしたちは
吸い寄せられるように布団に入りこんでごろごろしてる。
…朝の続きみたい。
ごろごろ ごろごろ。
『ねぇ、研磨くん』
「…ん?」
『どうしてカズくんに手を繋いだままはだめって言ったの?』
カズくんは好きだとかデートしようだとか言ってくれるし
かっこいいからどきどきするけど
でもまだやっぱり、弟っぽさは抜けないし
歳がどうとかじゃないけどそれでも男性というよりまだまだ男の子であって…
だから手を繋いだままでいたけど
『…いやだった?』
「あ、いや、全然。 …おれもカズマはいやじゃない」
『………』
「…ただおれが繋ぎたかっただけ」
…きゅん
「穂波が手を繋いでて安心するのはおれがいい」
…きゅううん
『…ん』