第15章 さくら
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「…渋谷から歩く?」
池袋に着いて乗り換え。
『あのさ、乗り換え一個多くなるんだけど代々木上原まで行ってもいい?』
「…ん? いいけど。 小田急線だっけ? …新宿にいけばいい?」
『あ、うん。渋谷からでもどっちでも。滅多にいかないけど、なんか街の雰囲気が好きなんだよね』
「へぇ」
『あーでもお腹いっぱいで買い食いはできないかぁ』
「…ふ 笑」
『美味しいお店がいっぱいあるんだよ』
「…ん 笑」
『研磨くん、すごくにやけてるよ』
「…にやけてない 笑」
『いや、にやけてる』
「… 笑」
『………』
「…コホン、 穂波、食べるの好きだね」
『…うん』
「そんなに量は食べないのにね」
『…うん』
研磨くんの私服は今日もかっこいい。
だぼっとしたアイボリーのベイカーパンツ、
えんじ色の大きめのカットソー、
モード感のあるキャメルのブルゾン。
いつもの黒いスニーカーと、黒いウエストポーチ。
だぼーっとしてて、重心が下にいってる感じ。
いつもちょっとストリートっぽいとこが
研磨くんのアンニュイな雰囲気と相まってやたらおしゃれにみえる。
代々木上原の駅に降りて、
ぶらぶらと歩く。
美味しいパン屋さんがあちこちにあるけど、
さっきパン食べたばかりだしな〜
自然食品店の軒先に小ぶりのりんごが売っていて、
思わず吸い寄せられる。
「…ふ 笑」
『りんご、買ってこうかな』
「重くない?」
『公園で食べる』
「あ、そっか」
研磨くんは丸かじりとかしないかな、
顎痛いとか言いそう…
でも2つ、買っておこ。
研磨くんも一緒に入ってきて、小さな店内をみて何かを買ってた。