第15章 さくら
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『研磨くん、一緒にお皿洗わない?』
断ることもできるようにか、
食事を終えて立ち上がったタイミングで
小さな声で穂波に聞かれる
「…ん、まぁ、別にいいけど」
そう答えると、穂波は母さんのとこに行って交代しようとする。
なかなか母さんもどかないけど、
「…おれも一緒にやるから」
そう言うと、母さんは
「あら。じゃあお願いする」
そう言ってさらっとシンクから退いた。
穂波ん家でたまにやってるように
一緒に皿を洗ってく
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「今度、鉄くんも誘おっか」
いちごをみんなで食べながら母さんが言う
「…なんでクロ」
母「…なんでって、なんとなく」
父「鉄くんももう今年で卒業かぁ」
「…まだ始まったばっかだし」
母「でも穂波ちゃんもいるし安心ね」
「………」
母「やっぱり鉄くんも一緒にこんどご飯しよ」
「………」
母「あれ、喧嘩でもした?」
「してない」
『…ふふ。研磨くんとクロさんって喧嘩したことあるの?』
「…いや、ないかな、多分」
『すごいね、長い付き合いなのに』
「クロは、いつもクロだから」
『………』
母「鉄くんはなんだかんだで研磨を見守ってくれるからねぇ、喧嘩にはならないのかもね。
今のことは知らないけど、小さい時はそんな感じだったかな」
父「2人とも、別に温厚なわけじゃないんだけどな。
研磨も負けず嫌いで、なにかされたらどうにかしてやり返そうとするんだけど。
鉄くんはなんというか…
人の個性を尊重してくれるような子だからな、喧嘩にはなりにくいのかもしれないね」
『………』
(あぁ、ほんと。そんな感じする)
「…まぁいいよ、もう。 …そろそろ行く?」
父「あぁ、そうか。これから穂波ちゃん家に行くのか」
母「そうね、遅くなる前に出た方がいい」
『…ん、じゃあ、そうだね』
「母さん、明日も泊まってっていい。土曜、部活そのまま行く」
母「うちはいいけど、ちゃんと穂波ちゃんのご両親にも自分で承諾を得なさいよ」
「…ん。 …じゃ、荷物とってくる」
『あ、わたしも鞄、上に置いてある』
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