第15章 さくら
『研磨くん、いつもみたいにしていいよ。ここでは何と戦うの?』
「…ん? あー、別にこれでは普通にこういうこともしたりするよ。
だからこれはこれでいつも通りなんだけど」
『ん、ならよかった』
「戦うのは、モンスターとだけど… ギルド…なんかグループがあって、その人たちと一緒に戦ったりする。
…でもバトルだけなら他のやつでやってる。 集まるの夜遅くが多いからあんまできないんだけど」
『ほぅ…』
「こういうの、大会もあってさ。これはないんだけど… んーと
オンラインゲームの大会もあって、優勝できたら結構な賞金がもらえる」
『…へぇ、出たことある?』
「…まだないんだけど、そのうちやってみようかな、とか」
『へぇ。 すごいね。よくわからないけどすごい。 新しい世界を知ったよ、わたし』
「………」
『あ、プロゲーマーってやつ? どういう意味だろうって思ってたの。カズくんが言ってて』
「…んー、まぁ、そうだね。それも、一つの手かなとは思ってる」
『…一つの手』
「そこだけを目指すつもりはないけど、一つの手段にはできるかな」
『ほぉ。 …わぁ、わくわくしてきた』
「…ん」
…研磨くんの、これからのイメージ
初めて少しだけだけど垣間見た。
きっと、今はまだか、これからもずっと、のどっちかは知らないけど
ひとつに絞ろうって思ってないってことなんだろ。
「…家でできる仕事にすれば、逆にどこに行っても仕事ができる。環境さえ整えたら。
人になるべく会いたくないし家で仕事したい、って前から思ってたんだけど、
穂波といるようになって、それって逆にどこにでもいけるなって思った。
国内の海辺でも、ハワイでも、オーストラリアでも」
『………』
「………ごめん、なんか飛躍しすぎた」
『…ううん、ちょっとびっくりしたけど』
…そんなこと考えてただなんて。
『未来のイメージを聞けるのは嬉しい。 …その中に少しでもわたしがいるなんて、すごく嬉しい』
「…ん。 少しって感じでもないけど、いっぱいにしてもね、ふにゃふにゃになっちゃうから、
まぁ、少しくらいに留めてる、意図的に」
『…ふにゃふにゃ?』
「…ん。ふにゃふにゃ。 …まぁいいよ。 …あ、このゲーム、朔さんもしてるって」