第15章 さくら
ー研磨sideー
「…そろそろ帰ろっか」
『…うん、いっぱい歩いたね』
夢中になってすごい、喋った気がする。
…穂波はそれでもいつも通り楽しそうに聞いてくれたり、
一緒になって考えたり、それから戦のことになると少し難しい顔をした。
仮定の話なのに。 …かわいいけど
ふわーっと強い風が吹いて、
桜の花びらが上からも下からも舞う。
穂波は風に押されるように繋いでいた手を解いて走りだす
両手を広げてくるくると回りながら
花びらの中を舞うように…
『うひゃあ、綺麗だったぁ』
「…うん」
花びらも、穂波も、綺麗だった。
それに今、穂波の髪の毛には花びらがいっぱいついてる。
落ちてきたばかりで綺麗なのはそのままにして、
すこし茶色いやつだけいくつか取って落とした。
「桜っていいね」
『うん、桜っていいね』
桜さえも、穂波に出会うまでは特に気にしてみたことはなかった。
今年は、穂波がオーストラリアに行ってから満開だのなんだのと
テレビや電車の中の声が聞こえてきて、
その、周りの桜に対する反応はきっと例年通りのことなのだけど、
穂波と見たいな、ってずっと思ってた。
「…来年も、見にこよう」
『うん!明日も見にいけるし♪』
今からもう来年の話するとか、よくわかんないけど。
ずっと、一緒に見に来たい。