第4章 矢印
電車に乗り込むとツトムくんが自己紹介を始めた。
「どうも、ツトムです。
写真の勉強がしたくって、明日穂波ちゃんのお父さんの手伝いをやらせてもらえることになって。
出発が早いので泊めてもらえることになり、一緒に家に向かってるとこです。怪しいものではございません。」
「写真ですか〜!学生しながらっすか?」
クロさんが上手にツトムくんの相手をしてくれたので、
わたしは研磨くんの横に行く。
「…お父さん、写真撮るひとなの?」
『お祖父ちゃんのサーフショップ継ぐ前は、フォトグラファーとして活動していたの。
いまは、お店メインで写真の仕事は選り好みしてる。笑
明日は、お友達のアパレルブランドの撮影もあるんだ。
ツトムくんはとにかく現場で体験したいみたい。』
「…へぇ。穂波も手伝い?」
『なんかいろいろ。手伝い半分、遊び半分、てとこかな。
ダンスのレッスンも増やしたいと思ってるし、少しでも貢献しないと。笑
うちの親、基本ゆる〜いんだけど、結構そういうところは厳しくって。笑』
「…レッスン、増やすの?」
『…うん、研磨くんたちのことみてたら、ちょっといろいろ思うことがあって。』
「…え、そうなんだ。」
『うん、そうなんだ。また詳しく決まったら報告する。』
「あしたは穂波ちゃん、モデルもするんだって〜」
ツトムくんがぴょこっと話に入ってくる。
「お、水着?」
「………」
『…んー、水着はないはず。ツトムくんは明日海入らないの?』
「俺は、雑用ない時は写真撮ってるかな。
穂波ちゃんの水着姿も撮ってきてみせてあげるね〜♪」
「………」
「おーそれはそれは。楽しみにしていますっ」
『もうクロさん乗らなくていいから。笑
ほんとお馬鹿な会話はやめてちょうだい』
「お、駅着いた。じゃあ鉄朗くん、研磨くん、お先〜!またね〜ん」
『研磨くん、合同練習頑張ってね。また月曜日にね!
クロさんも、また!ツトムくんの相手してくれてありがとう〜 笑』
「…うん、またね」