第4章 矢印
全身を使った
エネルギッシュな踊り。
いまわたしが特にはまっているのがタヒチアン。
すっごく気持ち良い。
8月に一度、イベントに参加するので、
最近はその振り付けをやってる。
レッスンの後、
タヒチアンの先生、奈々さんに聞きたいことがあったので、
少し話しをしてから、スタジオを後にする。
階段を降りると、ツトムくんがタバコを吸っていた。
足元には泊まり用の鞄と、機材。
「おいっす、お疲れ〜!」
『お母さんから連絡あった?』
「おぉ、行けることになった。で、明日出発早いから泊まってけって言ってもらって荷物取って来たとこ。
穂波ちゃんのボディガードも兼ねて一緒に帰ろうかと。」
『まぁ、それは心強いこと!笑』
ツトムくんと歩いて駅に向かう。
ツトムくんはニコニコしたお猿さんみたいだけど、背も高くすらっとしてて、
ちょっとよそ行きの顔をすればモデルとかもできそうな風貌をしてる。
ホームで電車を待ってると、研磨くんとクロさんの姿がみえた。
『あ、ツトムくん、ちょっと向こうに移動してもいい?』
「ほーい」
『研磨くん!この時間まで練習してたの?お疲れさま。』
「……うん。穂波もお疲れさま」
「ちょっと試してみたいことができて、遅くなったんだよね。
研磨は付き合わされる形になったから、ちょっと不機嫌 笑」
『そっか、でも会えて嬉しい。』
「ちょっと穂波ちゃん、俺という男がいながら何を言ってるのっ?」
ツトムくんが腰をかがめて覗き込んでくる。
『変なこと言わないで。
彼はツトムくん。明日一緒に海に行くひと』
「なんて簡素な紹介」
『彼は研磨くん。わたしの彼氏。
こちらはクロさん。研磨くんの幼馴染です』
「え!彼氏できたの聞いてない!ショック!」
『…もういいから、ツトムくん。一番年上が一番落ち着きないよ』