第1章 出会い
わたしの席は廊下側の前から二番目。
クラスメイトに頼まれて、
窓側から二列目、前から五番目の席と交換していた。
いつもはよく見えない、雨に濡れた校庭や花壇、紫陽花の並木、
窓に伝う雨の滴の美しさに、すこし酔っていたのだと思う。
六限が終わって、わたしは机に伏せて窓の外をみていた。
そして気がついたら隣の席に左手を伸ばして、
ゲームをしているらしき孤爪くんの右手指を、
つーっと、なぞっていた。
『「・・・」』
「…え。なに?」
『・・・』
(っ!ほわほわと数々の美しいものに酔ってしまって、なにも考えてなかった!
いま急速に状況や流れを理解したよー!)
『あっ、ごめん。
指、細くて長くて、綺麗だなぁって。
つい、気がついたら触れてたっ。
ゲーム?邪魔しちゃったかな。ごめんね。』
「別に…大丈夫。
そろそろ部活行かなきゃだし…」
『わたし、運天穂波。
孤爪くん、だよね?』
「…うん…孤爪……研磨。」
『研磨くん、部活なにしてるの?」
(知ってるけど、さ。この流れで知ってるっていうのも、さ!変な人みたいじゃない??)
「…バレー部。中学のときから」
『へー、そっか!わたしの従兄弟もバレー部入ったって言ってたなぁ。県外だけど。
研磨くんはね、セッター、かな。ふふ、勝手な予想』
(これはほんとに、勝手な予想だよ。計算じゃないよ)
「…うん、そう。
……運天さんは?…部活」
『わたしは帰宅部!笑
今日ももう帰るよ〜』
「そっか。…でも、「研磨ぁー!部活行くぞー!」…あ、クロだ。
運天さん、またね。」
『うん、また明日。
練習頑張ってね!』
…わっ!わわっ!
初めておしゃべりしちゃったー!嬉しい。
予想外の入り方だったけど、まぁいいや。
…研磨くん。
なんだか気になるが加速しちゃう。