第4章 矢印
昼休み、中庭で一緒にお弁当を食べた後、
研磨くんが夏休みの予定を話してくれた。
『あ、思ったより、会えそう。
わたし、部活入ったことなくって、よく知らなかった』
「…ん。」
合同合宿でわたしにお手伝いができることがあるかも、ってクロさんが言ってくれたみたいだけど、
合宿の2日目から2週間、わたしはハワイ島へ行く。
あとは、8月の半ばに1週間ほど宮城のおばあちゃんのお家へ。
それ以外は、予選大会だったり、レッスンだったりはあるけど、
お互いの様子を見ながら、会おうと思えばいくらでも会える。
『ふふ、改まって予定決める、ってこともなさそうだね。
けど一つだけ。夏祭り、一緒に行きたいな。』
「…ん。行こう。」
『お互いの家がある駅も近いし、気楽にでいいね。
…ふふ。拍子抜け。けど、なんかほっとした』
『昨日、久々のバレーはどうだった?』
「…ん。疲れたけど、良かった、かな。」
これから、研磨くんがバレーをしているところや、
バレーに向き合っている姿をみれるの、楽しみだな。
いつものベンチには人がいたので、
中庭の脇にある芝生コーナーの樫の木の陰に私たちはいる。
んー、早起きして海へ行ったから眠くなってきちゃった。
研磨くんは今日も隣でゲームをしてる。
わたしは、樫の木にもたれかかって目を閉じた。
自分には気にも留めない音を聞きながら、眠りに落ちるのって気持ち良い。
虫の声、鳥の囀り。
ここでは、学生たちの声や足音。
教室から聞こえてくる椅子の音。
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ひかり「芽衣!ちょっときて!」
ひかりに手を引っ張られて来た渡り廊下の窓からみえたのは、
中庭の芝生に植えてある木の陰で、
研磨の肩にもたれかかって眠っている穂波と、
その頭に頬を乗せて寝ている研磨の姿だった。
芽衣「…平和な光景だね。そっと見守る、以外の選択肢がない感じ」
・ ・ ・
そしてこちらもまた
山本「黒尾さんっ!」
夜久「黒尾ー!」
クロ「………」
(…あの2人今度は何を…)
二階の渡り廊下でボールを使ってパスをしていたという2人に言われたままに、
窓から中庭をみると、
木陰でお互いに支え合いながら眠りこけている研磨と穂波の姿。
クロ「平和だねぇ」