第4章 矢印
ものすごく静かで、2人だけの世界に来たみたいだった。
時間にすると5秒くらい、なのかな。
穂波さんの唇は柔らかくて暖かい。
…それから、気持ち良い。
静かに目を開けながら
ゆっくりと唇を離すと、
穂波さんと目が合った
「…おれ、」『…わたし』
「『…………………』」
「おれ、穂波さんのことがすき。」
なんだろう、数秒唇を重ねてただけなのに
まだ ほわほわ してる。
『研磨くん、
わたし、研磨くんのことがすき。』
ゲームから右手を離して、
穂波さんの髪に手を伸ばす
髪を耳にかけて、頬に手を添えて
もう一度…
キスをした。
ただ触れるだけのキス。
それだけで、こんなに気持ちいい。
唇を離して、目を閉じて額と額をくっつける。
ゆっくりと離れて、また、見つめ合う。
時間が止まったみたいだ。
どちらからともなく、微笑んだ。
「…よろしくね」
『うん、よろしくね。』
「…ほわほわする。」
『ほわほわ…うん。魔法みたい』
ヴッヴッ
携帯が揺れた。
「…あ、部活。」
確認するとクロからメールが入ってた
【先行ってる。あとでゆっくり聞かせろー】
「…部活、行ってくる。途中まで一緒に行こ」
靴を履き替えて、外に出る。
「…部室、向こうにある」
『ん。研磨くん、部活頑張ってね。
行ってらっしゃい!』
チュッ
穂波さんはぴょんとはねて
おれの頬にキスをした。
『また明日ね〜』
と笑顔で手を振り、正門の方へむかっていった。