第11章 暁
ー穂波sideー
「ほれ、手ぇ繋ぐ」
お兄ちゃんが変なこと言ってたし
光太郎くんはきっと何も意味なく手を差し出してくれてるんだろうけど
ここで手を繋いじゃうのはなんか違う気がする。
『光太郎くん、ありがとう。でも大丈夫。
光太郎くん大きいし、髪の色も独特だし、オーラもすごいから見失わない。
もし万が一迷子になっても、光太郎くんが大きな声で呼んでくれたら絶対に辿り着く自信ある』
そう伝えると光太郎くんはしばらく動かずに黙ったあと
「それもそうだな!」
とだけ言って歩きだした。
ハンバーガー屋さんはわたしたちがいたところから反対端の一階にあって結構歩いた。
見失いそうになっても、綺麗なグレーの髪の毛がしっかり逆立っているからすぐに見つけれた
お店はやっぱりすぐに入れるわけじゃなくて、
すこし待ってから案内される。
光太郎くんはスーパースターっていうののパティ3枚入りと、
マッシュルームアンガスバーガーのダブルパティとオレンジジュース。
パティ全部で5枚って…すごいなぁ
わたしはポテトが食べたいから
バンズなしのレタスラップチキンサンドと
光太郎くんも食べるかなぁとLサイズのポテト、
それからオレンジジュース。
美味しそうにむしゃむしゃと食べる様は見ていて気持ちよく、
お店に響きわたるような
「うまい!」っていう声も
光太郎くんから滲み出る人柄によるのか嫌な顔する人はいなくて、
くすくす笑う声が聞こえたり、
いそがしそうな店員さんの張り詰めた表情がふわっとしたり、
お店の雰囲気全体が軽く、明るくなってるように思えた。
試合を見る前に人柄を知るのってもしかしたら
とっても贅沢で面白いことかもしれない。
音駒のみんなの試合も、
光太郎くんの試合での姿も、
想像してみるけど、
きっと絶対その上をいくものがあるんだろうな…