第11章 暁
日曜日。
お兄ちゃんと一緒に早朝サーフィンをして
銭湯で暖まってゆるゆるの状態から
一気に喧騒の中に迷い込んでいる。
ショッピングモールなんて久々にきた。
新年の初売り出しはもう終わってるはずなのに、すごい人。
そのままセールに突入してるのかな。
あばあばして目を回しそうなわたしの手を
お兄ちゃんが繋いでくれる。
小さな頃と何も変わらない感じで。
「お前、まじで迷子になりそう。呼び出すのも呼び出されるのも勘弁。笑」
『いや、これはわたしも自分でもそれ思った。
こんなだったっけ?わたしって。空港とか平気なんだけどな』
「台湾の空港も年末年始そうとう混んでたはずだし、
屋台とかマーケットでは飄々としてんのにな。
ま、いいよ。安心してお兄ちゃんの手を握ってなさい」
『ん。…あ、気を抜きすぎてるのかも。お兄ちゃんがいるから』
「いやそれは台湾でも空港でも一緒だろ」
『旅ではないし。うん』
「まぁなんでもいいよ。てか、今日ここきたの間違いだったかも…しんど」
ほんとに人が多いのだ。
「あっこの店だけ行って、メシはどっか落ち着いたとこで食べよ」
『うん』
早々に人混みに揉まれることをを諦める兄妹。
…あぁ、わかった。買い物しに来てみんながギラギラしてるんだ。
そしてわくわくより、そのギラギラしたのがが勝ってる感じ。
テーマパークとか空港とか、屋台の人混みとはちょっと違う。
お兄ちゃんとすごく仲の良いお友達が働いてた路面店が閉まっちゃって
今はここにいるということで来た。
お友達も来週から旅行に出るらしくて今しか会えないってなったみたい
会えてもあまり話せないだろうに…
顔だけでもみたいってこともあるよね。うんうん
お兄ちゃんの行きたかったお店の隣がスポーツ用品店だったので
ちょっと覗いてくることにした。
なんとなーくバレーコーナーのとこをみる。
ボールの大きさとか素材とか
いろいろ違うのねぇ…とか考えながら。
セール品のところは人だかりだけど
こういういつも通りのコーナーには、
必要な人と、わたしみたいにふらふらしてる人しか来ないようで
すこしほっとしながら、行くとこもないし
じっくりと説明とかを読んだりして。
「おやおや〜?」