第11章 暁
部活帰り、改札を抜けると穂波がいた。
黒いダウンにデニム。
ニットキャップを被ってる。
手袋は、してない。
かわいい。
…普通に周りにもいっぱいいる格好だけど、いちいちそう思う。
『研磨くん、お疲れさま』
「…ん」
繋いだ手をポケットに入れて歩く
『あのね、22時過ぎちゃうんだけど、
お兄ちゃんが研磨くんに家にいて欲しいって。
帰りは車で送ってくから、って言ってた。
研磨くんの都合でどうするか決めてもらえればいいんだけど…』
「あ、うん。いいよ。おれも会いたいし」
『…うん、わかった。お母さんからも研磨くんの家に連絡入れてもらうね』
「…ん」
初めて会う人に、会いたいとか、普段思わない、
むしろ極力避けたいくらいなんだけど、
穂波の親のときもそうだったし、
お兄さんにも会いたいって思ってた。
たぶん、おれでも平気な気がする。
・
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『研磨くん、一緒にお風呂入ろう』
ストーブの通気口を開けて火を大きくしながら
穂波がいう。
ダウンを脱ぐと、リブのカットソー1枚。
首回りがいつも空いてる。
「穂波ってもしかして、タートルネックとか苦手なの」
『…へ? …あ、うん。そうなの。シャツでもなんでも、首が詰まってるのが苦手。
タートルネックのニットとかさ、可愛いから何度も試すんだけど、いかんせん、そわそわして』
「…ふ 笑」
穂波はおれのブレザーに手をかけて脱がせる
『お風呂はいろ』
あぁ、そうだ。さっきそんなこと言ってた。
「…ん、待って」
手を引いてお風呂に向かおうとする穂波をぐっと引き寄せる。
「キス、する」