第10章 2012
ー研磨sideー
お風呂から上がってストーブの前でゲームしながら
穂波に髪を乾かしてもらってる
明日、家に帰るのかぁと思うと
なんか…わかんないけど、
髪乾かしてって言ってた。
…変なの
でも快適。
ゲームしてる間に髪が乾くなんて。
いつもめんどくさくて最後まで乾かせないから
お風呂上りはちょっと頭とか首が寒かったし
『はい、もういいかな。 …どうですか?』
穂波が髪をぱらぱらしながら言う。
髪触ってもらうのって気持ちいいな
猫がごろごろ言う感じ、わかるかも。
ドライヤーを片付けるために髪を離した手を掴んで引っ張る
よろめいてきたとこに
後を向いて口付けた
「…ん。ありがと」
『…ふふ。どういたしまして。
わたしも髪、乾かしてくるね』
穂波はドライヤーを持って脱衣所に向かう。
お兄さんが土曜の大会で順位内に入れば、
明日の夕方から夜の便のどこかで福岡に行くって言ってた。
日曜の夜にはこっちに戻ってくる。
水曜までは家には穂波ひとり。
…月曜も泊まりたいなー
・
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『研磨くん、どうぞ』
穂波が髪を乾かしてから
お茶を持ってきてくれた
揺れる髪の毛からふわっといい匂いがする
「…いい匂い」
手首を掴んで引き止める
『…ヘアオイルの匂いかな? よかった、研磨くんもこの匂い好き? ゼラニウムって花だよ』
「…うん、好き。 もっとこっちきて」
脚の間に弾き寄せて、
穂波の身体に顔を埋める。
腰まである長い髪の毛からはふわっと控えめに花の香りが漂う
なんか、おれ今日おかしくない?
教室でも穂波にキスしたし、
さっきもいつもに増して気持ちよかったし、
髪乾かしてとか言うし…
ま、いっか。
見上げると、すごく優しい表情をして穂波がおれをみてた。
唇が重なる。
『…ゲームの音、ずっと鳴ってるね』
くしゃっとした笑顔を向ける。
「あ、止めるの忘れてた」
…あれ、いつから止めてないんだっけ
音、全然聞こえてなかった