第3章 歩み
(…ま、そうだよなぁー。俺もわかんね。
けど気付いたらキスしてるとかがあるんなら、
上手くいけばとんとん、と次の展開にも行きかねねぇよなぁ)
「研磨、これやるわ。財布にでも入れときなー」
クロはポケットから財布を取り出して、がさごそするとおれの前に小さな包みを二つ置いた。
「…これ、なに」
「…ゴムだよ、ゴム!」
「……やめてよ。いらないし。なんでそうなるの」
「今朝の会話といい、なんかもーお前らいつなにが起きるかわかんねぇし、
ま、お守りお守り。持っとけー」
………。
「いやまじで、大事にするならちゃんとつけろよ。
だから、期待とか予定とかそういうんじゃなくて、お守りだよ。持っとけ。」
「………はぁ。なんでこんなことまで…」
「お前が自分で買いに行くってんなら、無理には渡さねぇよーだ!」
「………ん。もらっとく…」
それからクロはいつもどおりに、おれの部屋で過ごして、
夕飯前に帰っていった。
おれがバレー部のみんなに尋問されないように、とか
クロがいろいろ気を配ってくれたのはもちろん分かってる。
きっと明日、みんなにはうまく伝えてくれるんだろう。
いつも、クロには感謝してる。
・
・
・
惚れる。恋。好き。
…か。
自分の感情にいちいち名前をつけなくていいと思うけど…
…テスト勉強しよ。