第10章 2012
「わ。…おいしそ」
昼休み、弁当の蓋を開けてびっくりした。
「…これ、今朝作ったの?」
『…ん?作ったのかな。いつもね、空いた時間とかにまとめて作っとくの。
今日は詰めただけだよ』
そんな風に何もしてないみたいにいうけど
結局手作りなんだし…
昨日の炊き込みご飯にささみフライ、蓮根サラダ、
ブロッコリーのお浸し、蒟蒻のきんぴら、卵焼き、漬物…
あと、人参しりしりだって。
おもしろい名前。穂波が教えてくれた。
「…おいしい」
『…ん。よかった。 保温瓶におでん持ってくるか迷ったんだよ〜
でもやっぱ熱々食べたいって思って。我慢した』
「…そか。…今日、穂波遅い日だよね」
金曜日はレッスンが終わるのが遅くて
高校と同じ駅にスタジオがあるから
たまに自主練に付き合わされたときとかに一緒になることがある
『うん。 …あ、そうだ、後で鍵渡すね。 …普通に暖房つけてあったかくしててね』
「…ん」
『…あぁ、すっかり抜けちゃってたなぁ。 …研磨くん、お腹ペコペコで帰るのに。
悔しい。 悔しいけど、おでんがある』
「…ふ 笑」
『本当、好きに過ごしててね』
「…うん、まだ帰らないよ」
『…笑 だね。 うっかりしてたから、その分なんか溢れ出てきたよ』
・
・
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なんか廊下が騒がしいな
…やっぱり。
クロたちがいる
「…はぁ………」
『あ、クロさんたちいるよ。 おーい』
にこにこと手を振る穂波
「…おれはしらない。弁当食べる」
『…ふふ。量どんな?』
「…ちょうど良さそ。ばっちし」
『…ん、よかった。ばっちし』
そう言って、ふっと長い髪がおれの頬に触れたかと思うと
穂波の唇が重なってた
ゆっくりと唇を離して
口元をペロリと舐めてくる。
「…ちょっと」
ここ教室なんだけど
『…ごまがね、ついてたの。こんにゃく食べた時に』
「………」
『ほんとはもっとしたい』
「…穂波」
『研磨くんはかっこいいしかわいいし色っぽいしエッチだし…』
「…ちょっと」