第3章 歩み
「教室着いたら、山本がよぉ、
昨日の昼休みに研磨が穂波ちゃんにキスしたのを見たって言ってるやつがいるって、
HR前に言いにきた。」
「…!」
「ついでに言うと、昨日の昼飯のとき2人で手、繋ぎながら弁当食べてたって噂も入ってきた。
それは、俺もみてたけど」
「………」
「今日は、昼飯食べようと思ってたら、夜久が教室に凄い勢いで入って来て。
研磨が弁当持って、穂波ちゃんに手首を握られながら廊下を歩いてるらしい、と」
「………」
「そしたら、黒尾、速報速報ー!って、他の部のやつらがさ、
穂波ちゃんがごめんって、手を離したら、研磨が手を握り返して、
2人は手を繋いで中庭まで行ったってよ」
「………」
「そのとき研磨は、なんかかっこいいセリフ言ってたって。
あー…なんだったっけね… …全然、嫌じゃな…」
「別に、かっこよくないし。セリフじゃないし。
何それ意味わかんない」
「登下校一緒にしてるの見た、だの。移動教室一緒に行動してる、だの。
穂波ちゃんの顔が、もともと知られてたってのもあるんだろうけどよ。結構狙ってるやついるみたいだし。
あらゆるとこからいろんな奴らが、同じネタを何度も何度も、俺のとこに…おかげで俺は今日…」
「…ご苦労様」
「バレー部のやつらが本当は今日、
研磨を捕まえてゲーム取り上げて根掘り葉掘り聞いてやるー!!って一致団結してたわけよ。
でも、それもなぁ、と思って俺が代表して聞いてくるわって言ってきたわけ。」
「………」
「一日ちょうだい、今日中に俺が聞けなかったら明日は好きにしろ。って…」
「………」
会話のペース、計算してたのかな。
ちょうどおれの家の前でクロは言った。
「研磨ちゃん。今日は逃げらんねぇよー?」
「…!」
視線をゲームから外して顔を見ると
クロは企てが成功したといわんばかりの悪い顔で笑っていた。